解剖学的有限要素モデルを用いたヒト足部midtarsal locking mechanismの解析

摘要

複雑な筋骨格構造であるヒトの足部構造は，直立二足歩行の生成に適応的に形づくられており，安定した二足歩行を実現するためのさまざまな形態機能が内在していると考えられている．その一つとして挙げられるのが，歩行立脚期後期に足根骨の相対運動がロックされることで足部全体が硬いテコのように振る舞い，効果的な蹴り出しを可能とするmidtarsal locking mechanismである．1960年にElftman［1］は，距舟関節および踵立方関節の回旋軸を関節面形態から推定し，立脚期後期に生じる踵骨の内反によって横足根関節が固定されうることを最初に指摘した．その後Blackwoodら［2］によって，踵骨の内反が前足部の可動性を低下させることが屍体足実験により明らかとなっている．しかし，歩行シミュレータに取り付けた屍体足で歩行を再現した際の骨格運動を計測した最近の研究によれば，踵骨が内反する立脚期後期においても，距舟関節や踵立方関節が必ずしもロックされておらず，ある程度可動することが指摘されており［3］，現在のところmidtarsal locking mechanismの詳細とその二足歩行への寄与は十分明らかになっていないのが実情である．