脳活動情報及び身体運動情報からの特徴量抽出による認知的フレイル評価に関する検討

摘要

高齢者の生活を大きく変え，介護状態になる危険因子の1つに転倒が挙げられる．加齢に伴う心身の機能低下により転倒が起こりやすくなり，また転倒後の閉じこもりによる社会機能低下が新たな心身機能低下を引き起こし次の転倒へと繋がっていくと考えられ，虚弱予防と転倒予防は密接に関わるものである．身体的·精神的·社会的な側面での加齢に伴う虚弱化を包括的に示す，フレイルという概念が老年医学分野で提唱されている．特に身体虚弱と軽度認知障害をあわせた概念である認知的フレイル（cognitive frailty）という概念が近年提唱されている[1]が，身体機能と認知機能の低下，あるいは認知的フレイルと転倒との関係は現段階では明らかにされていない．本研究では，身体機能計測と脳活動計測とを包括的に取り扱うことで認知的フレイルを定量的に評価するシステムを開発することを目的とする．開発するシステムを用いることで身体機能と脳活動を定量的に可視化しクラスタリングを行い，本研究独自に設定したつまずきやすさ·よろめきやすさを測る動作の結果を基に，対象者自身が自己の能力の特性を知り転倒予防に役立てることを目指す．本稿では脳活動の予備計測により得られた脳活動データに対し身体機能計測データと同一の特徴量抽出手法［2］を適用することによって1次元の特徴量を取り出した結果について主に報告する．本稿で提案する特徴量抽出の流れを図1に示す．