VRを用いた視野障害シミュレーションと電子リーダー設計への応用

摘要

視野障害は，全体的に見える範囲が狭くなったり，部分的に見えないところがあるなど，視野の欠損を示す症候である．重度の場合，日常生活のみならず，「読み」にも大きな支障をきたすことはあまり知られていない．「読み」は仕事や生活に不可欠であるため，視野障害者の生活の質の向上において，読み効率の改善は重要な課題である．例えば，視野障害の症状の一つである求心性視野狭窄の場合，周辺視野が失われ，図1のように見える．読書の場合，文章の行に沿って，短い距離の眼球運動であるサッケードと停留を繰り返すことで読みが実現される．このとき，次の停留位置を決定するために周辺視情報が必要である．そのため，中心視に十分な視力があったとしても，視野障害により周辺視が失われていれば，読書効率が大幅に低下することになる．しかし，視覚障害者の読み支援に関する研究においては，視野狭窄の支援を目的とした研究は少ないのが現状である．