加齢による身体動作の違いに着目した便座からの起立動作支援に関する動作計測

摘要

近年，高齢化の進む日本や欧米諸国において，高齢者が加齢に伴う筋力低下（サルコペニア）による歩行時や移乗時における転倒事例が報告されている．転倒が起こる場所の調査研究によると，便座への移乗中など，排泄に係る行動の際の転倒が全体の4 割以上を占めている．加えて，高齢者の起立動作能力と排泄行為の自立度を調査から，生活環境下における起立動作がQOL の維持向上に重要な要素であるといわれている．以上のように，高齢者の筋力低下により移乗時の動作などの日常生活で不自由を抱えている人たちの運動機能のサポートを行うことを背景に，本研究グループではコンパクトで静かな小型動作支援デバイスの開発を目指している．動作支援デバイスのコンセプトを検討するにあたり，椅子を用いた先行研究によると，座面角度が前傾している場合に立ちやすい影響がある可能性を示唆している．この知見を参考とし，本研究では，便座からの起立動作を便座の前傾傾斜角度を変化させる手法を検討した．一方で，便座を上昇させた場合のヒトの身体的負担についての基礎データおよび知見を得ることが必要であることから，年齢の違いを一つの評価軸とし，便座の傾斜角度をパラメータとした場合の起立動作におけるヒトの動作計測から，起立動作時の身体動作および身体的負担を考察し，便座からの起立動作支援方法の検討を行った．