大学入学者の情報スキル学習に関する調査

摘要

我が国では情報化による技術と社会の発展に応じ，初等中等教育における学習指導要領の改訂によって情報教育体制も見直されてきた.高等学校においては，2003年度に共通教科「情報科」が新設され，「情報A」「情報B」「情報C」から各校で選択開講された.2013年度では2科目に再編され，「社会と情報」「情報の科学」からの選択となった.また同時期に我が国政府は世界最先端IT国家創造宣言により，初等中等教育段階からのプログラミングや情報セキュリティ等に関するIT教育の推進を打ち出している.そして2020年度の新学習指導要領"では，小学校からのプロダラミング教育など情報教育の強化が図られる方向である.今後のIT人材不足の深刻化といった背景を踏まえ，学習指導要領改訂の重要性は高い.一方，多くの学校では進学を第一目的とした科目構成が定着しており，初等中等教育内における情報教育の接続，発展がうまく機能するのかが心配される.例えば，小学校で築かれたプログラミング適性が，中学校や高等学校で十分に生かされるためには，相応の科目数と学習時間が必要であるが,そのために進学に重要な受験主要科目を減らすことが現実的なのか疑問である.大学教育では，IT人材としての方向性を決定し，その基盤および専門の教育を実践することになるが，初等中等教育における情報教育の学習達成度は大いに影響する.