東京都江戸川区における集合住宅名称の空間分布に関する研究:水関連用語の名称を事例として

摘要

都市における空間価値は，交通利便性などの直接的利用が作用することにより地価への反映として明示されるほか，自然環境との近接により地域の良好なイメージの形成・向上に寄与することが知られている．既往研究では，主として質問紙を用いた被験者による地域イメージの検討のほか，経済学的手法を援用した貨幣価値への換算による検討が行われており，建築・都市研究においても，地名呼称の分布から「地区ブランド力」を検討した研究が蓄積されている．このように，当該地域を指す地域名称は実空間としての地域を指すと同時に，イメージ空間を形成しており，これらは主として集合住宅の名称に反映されている．具体的には，町名，近隣の駅名，公園名，名所・旧跡名を冠する「固有性」を持つもののほか，学園名称を冠する「文教性」や地形（丘・ヒルズ・ベルコリーヌ），自然構成要素（森林・河川名・山地名）の名称を冠する「自然性」などから良好な地域イメージを形成する事例がみられる．本研究では，東京都江戸川区を事例として，現存の集合住宅の名称のうち， 「水」関連の名称を有する集合住宅（アパート・マンション）を対象として，その立地特性を明らかにすることを目的とする．これは，水には河川や海などの物理的要素から，清新性や涼感など心理的要素を含む幅広い概念を有することによるものである．