東京におけるネオリベラリズム都市の形成と空間的分極化に関する研究: 東京23区内におけるジエントリフィケーションの実態に着目して

摘要

以下で議論をまとめると、第一に、都心およびその周辺地域に富と富裕層の集中が進み、所得低層世帯の多く居住するィンナーシティ地域との間での空間格差すなわち空間的分極化の様相が強まっていることが指摘できる。貧困の集中が一部の地域で強まることで空間的分極化が深化するという大阪市とは逆の現象といえる。また西ィンナーシティ地域の脆弱な密集市街地が、現在においても流入する若者層の受け皿となっているのに比較して、高度成長期に流入する若者層の受け皿となった北·東ィンナーシティ地域の密集市街地では、その後の若者の流入が減退した結果、より高齢化が進hでいる。ただし、北·東側のエリアでも駅周辺を中心に高層マンション開発による中産層ジェントリフィケーションが進行しており、単純な二分ではなく、西側のエリアも含めて、より小地域でのモザイク状の空間的分極化が進hでいることが指摘できる。上記の結果は、富裕層により都心部が占拠される一方で、地方から新規に流入してくる所得下層の独身層が都心近くのインナーエリアの密集市街地に居住することによる都市内の地域的格差が生じるという巨大都巿圏における空間的分極化仮説と整合的であり、同仮説の妥当性を示すものである。