ベルギー・ウイにおけるノートル＝ダム参事会聖堂の建設過程に関する考察（その1）:14世紀に取り壊された地上聖堂とクリプトについて

摘要

ムーズ河と支流オワイユ川に挟まれた狭隘な土地に誕生したウイの街は、周辺諸候との危うい政治的均衡を保ち続けなければならなかった代々のリエージュ司教の避難所として多大な寵愛を受け、9世紀以降都市としての形をなしていった。このウイに建設されたのがノートル＝ダム参事会聖堂(laCollégiale Notre-Dame de Huy以下、新聖堂)である。ステンドグラスやヴォールト天井画などからモザーン建築の傑作の一つに数えられるが、ゴシック様式で統一された現在の新聖堂に建て替えられる以前の聖堂(以下、旧聖堂)についてはクリプトを唯一の遺構として残すのみであり、未だ不明なことが多い。