春日大社旧殿にみる形態的特質: 本社本殿と若宮社との比較による考察

摘要

春日大社は文久3 年（1863）までの式年造替により、ゆかりの土地に下賜された数多くの旧殿が移築されていることが知られている。社殿が小規模であり、解体せずに運搬した可能性も考えられ、比較的移築前の姿を残しているとみられる。現在の社殿は古式の社殿の規模・構造を踏襲しているが扠首束や垂木などの細部に違いがあることも言及されてきた。さらに春日大社と旧殿の鎮座地の関係について、春日大社や興福寺との関係が深い土地に下賜されることを明らかにした研究はあるものの、社殿の移築や特質について未解明な点は多い。