近代日本による上海進出の基本方針

摘要

1894年日清戦争以降、上海における日本居留地の設置は日本の国家事業として位置づけられていた。しかし、近代上海の虹口地区は日本人街として知られているものの、正式な居留地としては認められなかった。なぜ、近代日本は上海で居留地の設置ができなかったのか？本稿は、近代上海における日本居留地の設置を廻る日本側の選地1に続き、黄浦江の実測調査、上海現地視察、及び日英米中との交渉活動に着目する。日本の上海に対する真の意図も探りつつ、上海居留地の設置に関する日本側の最終決断、その決断故の上海進出の基本方針とその意味の検討を通して、上記の疑問点を明らかにしたい。