アセチレン架橋構造をもつ二層グラフェンの第一原理計算による電子状態

摘要

グラフェンの六角格子構造にさまざまな変調構造を付与することにより，グラフェンにバンドギャップや磁性などの新たな特性を発現させる試みが理論的にも実験的にも活発に進められている。われわれは，グラフェン層間を炭素鎖でつなげた新しい架橋構造をもつ二層グラフェンの結晶構造を考案し、その電子状態を第一原理計算によって調査している。昨年度の秋季学術講演会では，グラフェン基面中の一つの六角リングを囲む6 個の六角リングの外輪に位置する炭素原子にエチレン鎖が結合する構造を提案し，6 本のエチレン鎖で架橋した構造（図１）では磁気モーメントが発生することを報告した（7a-C16-8）。磁気モーメントの大きさは，6 本のエチレン鎖架橋単位につき2μB であった。スピン密度分布がエチレン鎖の炭素原子と架橋により囲まれたグラフェン基面の炭素原子に局在していたので，sp~2 ネットワークがエチレン鎖の架橋部で囲まれて局在化したことが磁性発現に寄与していると考察した。