電気分析化学的に見た大気環境指標としての銅板腐食現象

摘要

我々の研究室では，1991年から，日本，及び，韓国の複数の大学と，酸性雨の共同調査を行い，降水中に含まれる大気汚染物質の日本への長距離輸送過程について検討してきた。その結果，冬季の季節風や，春のジェット気流によって，大量の酸性汚染物質やアルカリ性の汚染物質が，韓国や日本に飛来していることがわかった。一方，我々は，これまで，電極上への物質の吸脱着反応や，種々の酸化還元反応に関する研究，一般に小·中·高等学校で教材として用いられている電気化学反応の解析などを行ってきたが，その過程で，大気中に暴露した銅板の腐食が，大気中の汚染物質と関連していること，銅板の腐食量の絶対量がレモン電池を利用した簡単な方法で推定できることを見出した。今回の報告では，以下の概要に示した項目について，大気中に暴露した銅板の腐食現象の概要と，その電気分析化学的な検討結果について報告する。