腎臓の位相コントラストX線CT観察-エタノール固定法とホルマリン固定法の違い-

摘要

要旨近年，X線干渉計を用いた位相X線CT装置が開発されている.従来の吸収の散乱断面積に比べ位相シ フトの散乱断面積は，軽元素に対して1000倍以上大きく，生体や有機試料を非造影で観察できる.本研究 では，100 %エタノ 一ルと10 %ホルマリンで灌流.固定したラットの摘出腎臓を位相X線CTで撮影し， 脱水効果が著明で組織密度差を際立たせるエタノール固定法が画質に与える影響を比較，検討した.実験 は高エネルギー加速器研究機構で実施し，撮影時のx線エネルギーを35 keVとした.位相コントラストX 線CT画像で腎臓の微細構造がェタノ 一ル固定法でより鮮明に描出された.ェタノ 一ル固定腎臓の皮質と髄 質間の画像コントラストは画素値比で43 %と，ホルマリン固定の21%に比べ約2倍咼かつに.組織像は 皮質部の組織凝集が強いことを示唆した.したがって，腎臓内構造のイメージングにはェタノ —ル固定法 も有用と考えられた.