EU·カリフォルニア州の教訓を基にした排出量取引制度設計

摘要

日本においても，2005年のEUでの施行制度開始や，その後にアメリカ議会においても排出量取引制度導入議論があったことを受けて，国内対策の選択肢の1つとして同制度の検討が行われた．しかし，EUの排出量取引制度（以下「EU-ETS」と略す）が様々な問題を抱えたことや，アメリカ議会での議論が最終的には導入に至らなかったことなどをうけ，徐々に議論は下火となった．ただし，以降も，国際的には排出量取引制度は拡大を続け，EU-ETSにおいても改善の努力がなされてきた．さらに，後発のアメリカ·カリフォルニア州や東部諸州の制度が機能していることに加え，韓国，中国，メキシコ等での新規導入·検討をうけ，再び日本においても排出量取引制度に関する議論に注目が集まっている．本稿では，日本で再び排出量取引制度を議論する際に，既存の排出量取引制度の経験から，特に制度設計に関わる教訓を抽出する．事例として，EU-ETSおよびアメリカ·カリフォルニア州での制度を参考にする．