格助詞学習における日本語母語児の言語情報の利用－人工格助詞を使用した文理解実験から

摘要

本研究では，子どもたちが言語情報を用いて，機能語を学習するかについて，検討した．その際，日本語の他動詞文中で動作主－被動者を標示する格助詞に着眼し，日本語児がそれを学習するときに項などの言語情報を利用するかどうかを，人工格助詞ポ（動作主標示），ビ（被動者標示）を用いた文理解実験を行った．実験では，5歳児37名を対象に，項が一つしかない一項文（SV／OV）と，項が二つある二項文（SOV）で格助詞ポとどを呈示し，どちらの文でポとどを学習した子どもたちの方が，その理解の成績が良いのかを調べた．結果，一項文で格助詞を学習した子どもたちの方が，どの理解が良く，二項文で格助詞を学習した子どもたちが，ポの成績が良いということが明らかになった．