加水分解酵素と金属の触媒集積型動的光学分割：ラセミ体アルコールを光学的に純粋な化合物に収率100％で変換する新手法

摘要

リパーゼは脂質のエステル結合を加水分解する消化酵素であるが，有機溶媒中で用いるとアルコールとカルボン酸からエステルを形成する触媒にもなる。多種多様な酵素のなかで，リパーゼは特に安定で補酵素がいらず，かつ，非天然の幅広い基質に対して高い触媒活性とエナンチオ選択性を示す。最近では，何十種類ものリパーゼが市販されており，セライトや合成樹脂などに担持され粉末状になっているものが多い。アルコールのエステル化を行うときは，基質，アシル化剤（通常は，ビニルエステルのような高反応性エステルが用いられる），リパーゼの混合物を有機溶媒中で撹拝し，反応終了後は，リパーゼをろ過し，ろ液を減圧濃縮すればよい。このように，リパーゼは極めて使い勝手のよい触媒である。