氷結晶生成が魚肉の細胞外マトリクスに及ぼす影響についての組織学的研究－免疫染色を用いた氷結晶痕と細胞外マトリクスの同時観察

摘要

哺乳類の骨格筋において近年，新しい知見が集積されてきた．すなわち，激しい運動などによる筋肉に対する機械的ダメージから細胞保護や細胞膜の安定性維持をはかり筋肉を健常に保つうえでECMが重要な役割を果たしていることが分かってきた．魚肉凍結時に起こる組織軟化も従来着目されることのなかったECMの損傷による可能性が否定できない．しかし，凍結魚肉に関するECMに着目した組織学的知見は乏しいのが現状といえる．この原因は凍結組織についての組織学的研究手法が十分に開発されていないことにあると考えられる．そこで，本稿では凍結組織観察のための組織切片作製法を改良するとともに，凍結魚肉組織中の氷結晶とECMを同時に観察する手法を確立し，凍結に伴う魚肉の組織学的変化を詳細に調べることを目的とする．