消費者にとって望ましい遺伝子組換え食品表示制度を考える

摘要

遺伝子組換えとは，生物の細胞から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し，植物などの細胞の遺伝子に組み込み，新しい性質をもたせることをいう。この技術を用いて開発された遺伝子組換え食品が日本に初めて輸入されたのは1996 年で，今から20年前以上に遡る。除草剤耐性大豆，殺虫剤抵抗性とうもろこしなど，農業の生産場面においてメリットのある農作物の商業栽培が米国で始まったが，当時は新しい科学技術に対する懸念から，遺伝子組換え食品に対する日本の消費者の不安は強かった。食品表示によって選べるようにしてほしいという要望が高まり，こうした声を受けて，1997年から2000年まで表示制度の検討が行なわれ，2001年から現在の遺伝子組換え食品表示制度がスタートした。当時は食品衛生法とJAS法において，一部の食品において義務表示が規定されたのである。それから17年近くが経過し，日本に輸入される大豆·とうもろこしの多くが遺伝子組換え農産物となったが，実際にスーパー等で見かける表示は任意表示である「遺伝子組準えでない」という文字ばかりである。