人類の歴史からみた“食”と宗教のかかわり：第21回 （第17章）食糧危機を救う世界市民育成の地理学②－Think globally Act locally

摘要

地球における食糧危機の根本的な解決は，生命を慈しむ世界市民を輩出していく以外にない．信念の大教育者は世界市民を輩出していく使命を担った地理学を創出することを提唱した．人は地に生まれて地に育てられる．しかし，地のもつマイナスの作用，現実社会における厳しき状況も人間に降りかかってくる．鎌倉の先哲は「衆生の心けがるれば土もけがれ心清ければ土も清しとて浄土と云ひ穢土と云うも土に二の隔てなし只我等が心の善悪によると見えたり」と説いている．すなわち，心を変えることにより地のもつ良き作用，本来の機能を発揮させることができるというのである．依正不二という東洋の叡知は，人は環境とお互いに支え合って，一体となって存在していると説く．したがって，心を変えることにより，人と環境との良き関係性をつくることができ，これが平和な社会を築いていくとされる．気高い人は，何を見ても自然に引き付けられ，その光景が“詩”になっていく．自然を友とする生き方のなかに生命を慈しむ世界市民も輩出されてくるであろう．本稿では，大教育者の自著「地理学」を参考にしながら，自然と対話しながら生きゆくことの重要性を探求していきたい．