単層カーボンナノチューブのMEMS引張試験における顕微ラマン分光によるひずみ計測

摘要

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)はその優れた性質によってナノデバイスの基本構成要素として期待されてきている．その機械，電気，電気機械特性の測定は様々に試みられてきているが，単独のSWCNTの測定はいまだに困難である．またその一次元的構造から欠陥に敏感に特性が変化するため，多数の試料の測定と統計的な解析が求められている．そこで，微小電気機械システム(Micro electro mechanical system: MEMS)技術を用いてナノ材料の特性を測定しようという試みが多くなされてきている．多数の 機能を小さなチップに一括作製するMEMSでSWCNTの試験が可能となると上記の課題を解決し，またデバイス応用への道を拓くことが期待される．この中でSWCNTのMEMSへの集積化，また，MEMSを用いた計測技術の確立が求められている．MEMSへの集積化においては多数の電極間にSWCNTを同時，一括で設置する手法が求められ，我々は誘電泳動によるアセンブルと無電解めっきによる電気的·機械的クランビングを提案している．本研究ではこれをMEMS引張試験デバイスへのSWCNT設置に適用する．MEMS引張試験デバイスは熱膨張アクチュエータを一体化し，SWCNTを設置するギャップ部の間隔を変化させる引張試験を行う．このデバイスを用いてSWCNTへの引張ひずみ印加を試み，クランプ性能の評価と最終的にSWCNTを破断して引張強度を評価することを目指している．ここでは，クランプ固定力評価や強度測定のためにMEMS引張試験デバイス上に設置したSWCNTに引張力を印加しながら共鳴顕微ラマン分光によるひずみ測定を試み た結果を報告する．