農作業の安全を考える: 基盤整備を通じた農作業の安全性向上

摘要

農業を取り巻く環境の大きな課題の一つとして労力の不足が挙げられる。労力不足の要因としては，農業者の高齢化と農業者人口の減少や，農業競争力の強化のもとに農地の集積·集約化が進hだことによる担い手等の経営面積の増大が考えられる。労力不足に対応するための一つの方策として.ほ場の基盤整備が全国各地で行われている。基盤整備，いわゆるほ場整備については昭和30年代後半から何十年にもわたり行われているが，平成の初頭くらいまでは個人による営農が主流であり，また現在ほど農業者の高齢化も進展していなかった。ほ場整備の基本形としては，未整備の不整形なほ場をきれいな形のほ場に整形するとともに，道路·用排水路を整備することで農業用機械の導入や水管理を容易にし，農作業の労力の軽減や農作物の単収の向上を目指すものである。その際，ほ場整備をすることによるほ場の本地面積の減少は極力抑えることが求められていた。しかし現在のほ場整備においては，ほ場の本地面積が減っても農作業にかかる労力が軽減できるような整備を求める声が多くなっている。ここでは，どのような基盤整備を考え実施したか，その取り組みについて報告する。