有機金属分解法を用いて成膜したスピン波伝搬用磁性ガーネット薄膜における有機物分解時間の結晶性への影響

摘要

電子デバイスの普及が急速に進む社会においてその省電力化は大きな課題であり，これを実現する材料研究が重要である.酸化物フェリ磁性体である磁性ガーネットは絶緣体であり，伝搬するスピン波の減衰が小さいことから低消費電力デバイスへの応用が期待されている.我々は磁性ガーネットの高機能，高性能化を目指し，組成の変更が比較的容易な有機金属分解(MOD)法を用いてこれを成膜している.先行研究では，有機金属分解法を用いてGd_3Ga_5O_(12)(GGG)単結晶基板上に成膜した単相磁性ガーネット薄膜においての磁気共鳴の観測に成功した.さらに，磁気ひずみの異なる磁性ガーネット薄膜において，単相ガーネットの成膜に成功したことも報告している.さらに減衰の少ないスピン波伝搬に向けて，より結晶性のよい磁性ガーネットを得るために有機金属分解法の有機物の分解時間を増加することにより結晶性の改善が出来たので報告する.