「私の考えるPCIとCABGの境界」一Electrical stormを発症した左冠動脈主幹部病変を有する下壁梗塞例に対して行った4枝Off-pump CABG-

摘要

症例：64歳，男性.主訴：繰り返す心室細動発作，ST上昇型急性心筋梗塞.現病歴：これまで罹患歴なく過ごしていたが，2009年9月4曰安静時に胸痛が出現し近医を受診.心電図上急性心筋梗塞を疑われたが入院を拒否し帰宅した.9月8日再び胸痛が出現し心電図上ST上昇（II,III, aVf)と卜ロポニンT陽性であることから急性下壁梗塞の診断で前医に紹介された.搬送直後に心室細動となり，心肺蘇生を行った後IABP作動下に緊急CAGを施行.CAG所見（図1，2)は，#2 ； total occlusion. LMT; 90%, #6 ； 90%, #7;75%であり，責任病変である右冠動脈の完全閉塞に対してPCIを行い良好な開存が得られた(図3).左冠動脈は全体に細いものの血流は維持されていたのでそれ以上の評価はされず経過観察とされた.PCI施行後2日目でIABPを抜去し，5日目に人工呼吸器を離脱したところ心室細動発作が出現しこれを繰り返す.薬物投与ではelectrical stormは制御不能と判断され，埋め込み型除細動器(ICD)の埋め込みも可能な当院へ紹介，搬送された.既往歴：特記すべきことなし.家族歴：特記すべきことなし.喫煙歴：20歳より現在まで1日20本.現症：人工呼吸器装着で意識レベルはJCS 300.体温37.4degC.血圧85/65 mmHg,心拍数78 bpm 理学的所見に異常を認めない.