音声の知覚と発声の発達過程の構成的理解－認知発達ロボティクスによる音声発達－

摘要

Symbol Emergenceの訳語である記号創発の課題は, Harnad [Hamad 90]が提唱した記号接地問題（Symbol Grounding Problem）と表裏一体である. 「記号を接地する」という表現は, 最初にシンボルありき的発想で, AIのシンボル至上主義を連想させる. それに対し, 記号創発は, ロボティクスと結合することで, 他者を含む環境との相互作用を通じて, 感覚運動経験を抽象化していく過程, そして最終的には言語獲得に至る過程につながる, より一般的かつ広範な基本課題を含み得る. これは, 著者らが提唱し, 推進してきた認知発達ロボティクス[Asada09b, 浅田10b]の方向性と似ており, 言語獲得を最終ゴールとするならば, 著者らが推進してきたプロジェクトの成果や今後の課題[浅田12a, 浅田12b]のいくつかは, 記号創発の道筋であるとも解釈できる.