子どもの遊びにおける協調と対立のゲーム論的分析

摘要

子どもの世界をのぞいてみると，とにかく「遊hでいる」．子どもは「遊び」を通して他者や環境といった取り巻く世界に関わっていく存在であると言える．幼稚園や保育園など集団生活を営む場では，共同の遊びの中で様々に他者と交渉することが迫られる．何をして遊ぶか，どのようにして遊ぶか，という交渉である．そこでは，相手の提案に協調するか，それとも対立するか，あるいは遊びをやめるといういくつかの選択肢があるが，どれを選hだほうがよいかは，相手の行為選択によって自分の選択も左イJされるといったゲーム的な状況と考えられる．特に，クラスという有限の共同体の中で継続した付き介いを余儀なくされるといった制約もあるため，結果的に導かれた行為をただその子が「そうしたかったから」とか「そういう性質を持っている」といった個別的な要素を付加しただけでは，行為の意味を理解することができない．例えば，幼稚園や保育園といったフィールドで観察をすると，その場限りの短期的な遊びでも，あるいは，同じメンバーである程度艮期的に付き合いを繰り返す場合でも，リーダーと従属者といった役割が発生するということがよくある．一見理不尽に見えるこの関係は揺らぎながらも，何とか「うまくやっている」ように見える．個別的な要素で見れば，そうすることをお互いが「望hでいた」ということになるが，果たしてそれだけだろうか．そこで，ゲーム論的視点を導入し，自分のやりたいことがあってもそれを満たせないというコストを負ってでも，リーダーの遊びを享受するほうがよりよいという条件と，相手のやりたいことを採択するよりも，自分のやりたいことを主張したほうがよりよいという双方の条件を満たすシステムが存在すると考える．社会的なしがらみや考慮すべきものが少なく，白山に行動しているように見える子どもが，まるで損得を計算しているかのように振る舞っているというのはおかしいと思われるかもしれない，もちろh，複雑な環境においてチビもが状況を充分に分析して行為選択することは不叶能だが，しかし，実際に複数の他者や複雑な環境におかれ，白律した二巨体として利己的に振る舞う中で，他者とのやり取りを繰り遁すうちに，紆果斤封二友だちとうまく遊ぶようを戦略が導かれているかのようである．