ナノコーティングプロジェクト成果の応用展開

摘要

航空機エンジンや発電タービン用の熱遮蔽コーティング（TBC）を主なケーススタディとして，ナノオーダースケールの構造制御を施したコーティング技術開発の意義と研究成果，さらに今後の展望などについて論じる．コーティング技術は，異なった材料を組み合わせて使う複合化技術の典型として，特に最近大きく発展した材料技術である．例えば，金属基材上にコーティングしたセラミックス膜は，かつては金属基材の脇役的存在であったが，今や基材の存在に勝るとも劣らない重要な材料技術に発展し，時には先端技術を支える研究開発の主役を担うケースも少なくない．そのような開発状況の変化に伴って，セラミックスコーティングに対しての性能要求も年々増加する一方であり，新しいセラミックス膜開発には，より精度の高い構造制御技術，すなわちナノ構造制御技術の必要性が高まっている．JFCCは，2001年より「ナノコーティング技術の開発」のプロジェクト研究に取り組み，特に新しいコーティングプロセスである電子ビームPVD（Physical Vapor Deposition）を用いて，「耐熱性」をキーワードの一つとしたセラミックス膜合成の研究を進めている．本稿では，セラミックスコーティング研究意義を考えた上で，最近の研究成果を紹介し，さらには今後の展開を探ってみたい．