撥水性傾斜平板に沿って降下する液滴の動的挙動に及ばず液滴物性値の影響

摘要

鉄鋼精錬プロセスでは，溶鋼の組成や湿度の均一化のための撹拝だけでなく，溶鋼中の不純物や非金属介在物などの除去を目的としてガス吹き込み撹拝が広く用いられている。直径がある臨界値よりもづ、さな気泡が浴表面に到達して破裂すると，気泡内と周囲との圧力差により気泡内の気体は大気中へと勢いよく吹きだす。こ難をレイワージェットと呼ぶが，同時にジェットドロップと呼ばれる微細な溶鋼滴が浴表面から飛び出す。周知のように，この現象がスピッティングである。大気中へと飛散した溶鋼滴は反応容器壁へ衝突じて付着するだけでなく，跳ね返ってそのまま溶鋼中へ戻る場合や耐火物に沿って落ちていく場合がある。大気にさらされた溶鋼滴は再酸化して，耐火物に衝突すると汚染されるため，鉄鋼製品の品質向上には，スピッティング抑制法の研究だけでなく，溶鋼滴の耐火物近傍での動的挙動の把握が重要となる。なお，溶鋼との化学反応を抑制し，溶鋼の汚染を防止するため，耐火物には溶鋼との濡れ性の悪い材料が用いられている。したがって，溶鋼滴の動的挙動の研究に際しては，耐火物の濡れ性の影響も考慮する必要がある。