陰イオン交換カラムを分離、濃縮と反応を一体化した場とするセミミクロFIシステムによる鉄鋼中の極微量カドミウムの定量

摘要

近年，資源の有効利用や環境保護のために鉄鋼製造においても鉄源としてのスクラップの利用が盛hに進められている。その際，微量でも鋼材特性に大きな影響を与えるようなさまざまな元素が不純物として混入する可能性があり，鉄鋼中の極微量成分分析法の重要性が再認識されている。鉄鋼中のカドミウムについては，これまで鉄鉱石などの原料由来の可能性が低い，挿散しやすく鋼中には残留し難い，といった理由のためあまり関心が払われなかった。このため鉄鋼中に含まれるカドミウムの分析法や含有レベルに関する情報は少なく，著者らの知る限りにおいて，数ある鉄鋼標準物質のほとhどにデータの記載もなく，JIS法にも規定されていないのが実情である。しかしながら，上述のような環境の変化に加えて，2006年より施行されたRoHS指令などによりカドミウムを含む指定有害物質の使用が禁止となったことから，日本からの輸出品への規制は一層厳格化されることが予想される。これに関連して鉄鋼製品においてもカドミウムの含有レベルについでの正確な情報やそのための分析法の開発が必要となってくるものと考えられる。