社会文化史にみる都市の自然と公園緑地（第8回）

摘要

これは平安末期から鎌倉初期の京都に住hだ鴨長明（1153～1216）の随筆「方丈記」の有名な序文てある。 ここに登場する川とは，鴨川をさしていると思われるが，時の流れの無常を「川」に託した長明は,激動の時代をクールに見つめて,京都の人々と町のありさまを,この随筆の中に実にリアルに描き出している。 平安京遷都（8世紀末）から室町時代にかけての約600年間は,日本の都市環境について考える際，とくに重要だ。 なぜなら日本人の伝統的な自然観や環境に対する価値観,考え方や生活様式は,この時期にその原型が創り出され，彼の時代に引き継がれて発展してきたといっても過言ではないからだ。 とりわけ京都は，日本の都市文化のルーツとして,また，情報発信の地としての役割を担っていたし，後に江戸に幕府が開かれてからも，日本人の精神風土の形成という点で,独自の役割を担ってきた。