肩こりに対する鍼の剌入深度の違いによる効果の相違一予備的ランダム化比較試験—

摘要

【目的】肩こりに対する異なる刺入深度の鍼治療効果について比較検討した。 【研究デザィン】ランダム化比較試験により検討した。【セッティング】対象：慢性的な肩こりを有する患者16名を無作為に浅刺群（8名）と 深刺群（8名）の2群に割り付けた。介入：施術部位は両群ともに患者が肩こりを自覚す る部位、最大10力所として、計5回（1回/週）施行した。浅刺群は切皮のみ（約5mm)、 深刺群は10~20mm刺入し、何れも単刺術を行った。評価：毎回の治療前後および治療 終了4週後に肩こりの程度をVisual Analogue Scale (VAS)にて記録し、初回治療前、治 療終了時、治療終了4週後にはShoulder pain and disability index (SPADI)によるQOL 評価を行った。また、初回治療後に切皮痛、鍼の刺入感覚、ひびき感の有無について聴 取し、研究終了時には治療に対する満足度について調査した。【結果】VASに関しては、経時的変化パターン、初回治療前に対する初回直後および治 療終了4週後の変化量について群間に有意差を認め、深刺群で良好な結果を示した（経 時的変化パターンの差：P=0.0214、初回治療直後変化量：P=0.0233、治療終了4週後変 化量：P=0.008)。 SPADIに関しては何れも群間に有意差を認めなかった。鍼の刺入感覚 とひびき感については群間に有意差を認め、深刺群では有と回答した者が多かった（刺 入感覚：P=0.0014、ひびき感：P=0.0002）。また、治療に対する満足度については、深 刺群の方がより高い満足度を示した。【結論】VASの変化や治療に対する満足度に関する回答結果から、肩こりに対して症状 部位へ刺鍼する際は、過緊張などの問題を生じている筋組織への直接的な刺激となる深 刺の方が効果的である可能性が示唆された。また、鍼の刺入感覚とひびき感について群 間に有意差を認めたことから、これらの違いは治療効果の相違に影響する一因である可 能性を考えた。