ホウレンソウセル成型苗の電動型全自動移植機

摘要

ホウレンソウは指定野菜14品目の一つで，2017年産の作付面積は20,500ha, 収穫量が22.8万tとなっているが（農林水産省大臣官房統計部，2018),作付面積および収穫量は年々減少傾向にある。ホウレンソウは，高温になると発芽および生育不良となるため，平坦地では秋から冬にかけて露地で栽培され，標高の高い寒冷地では夏季の比較的冷涼な気象条件を生かした雨除けハウス栽培が盛hである。高冷地における栽培では，播種機を利用した直播体系が確立しており，同一ほ場で年間4～5回作付けが行われ,一部の地域では収穫機(佐藤ら，2005) や調製機（松尾，2000),包装機が利用され，機械化が進みつつある。しかし，単価の低迷や資材費等の高騰により，農業所得が年々減少傾向にあり，その改善が必要となっている。一方，ホウレンソウは移植栽培も可能で，在圃期間が短縮できるため年間の作付け回数の増加が見込める利点がある（田中ら，1994;亀田，1999;柴戸ら，1990;山本ら，1994)。また，セル成型苗を用いた移植栽培は，連結ペーパーポットと比較して資材費が少ないこと，株間の調節が可能であること，ソイルブロックと比較して作付け規模拡大が容易などの長所が挙げられる(高田ら，2006)。これまでに，ホウレンソウのセル成型苗に適した電動型半自動多条移植機が開発されているが(藤原ら，2006a),手押し式の4条植えで，2人組作業に最適化された仕様となっており，小規模生産には適しているものの，作業能率からすると大規模生産には対応できない。そこで，電動型半自動多条移植機を参考に，自走式の4条植えで，ホウレンソウのセル成型苗に対応した電動型全自動移植機を試作したので，その概要と性能について紹介する。