降水の地下浸透及びその地すべり誘引に関する同位体地球化学的研究（博士論文）

摘要

地すべりの発生の誘引は，斜面，地質構造，岩相などの地質状況など間接的要因と地すべり発生の引き金となる豪雨，融雪水，地震，火山活動などの急激な変化をもたらす直接的要因があり，どちらについても地表から地卜に浸透する降水が重要な関わりを持つ。 そこで本論文では，地すべり発生の予知，予防，あるいは発生後の被害の拡大の防止などのため基礎的な見知を増大させるための一環として，降水の地下への浸透，ならびに地すべり面粘土の生成過程の理解を深めることを目的として，地下水，河川水，土壌水，降水，及び地すべり面粘土について，主に酸素と水素同位体比を利用する同位体地球化学的研究を行った。それらは，地すべり地域内における降水の浸透と地下での混合について，山地源流域における河川流出成分の識別について，降水の浸透と無降水時（定常状態）における土壌水の挙動について，人工土壌カラムを用いた土壌水帯における水の同位体変動モデル化について，及び地すべり面に存在する粘土鉱物の生成環境についてである。