デジタルパノラマエックス線撮影のための多断層画像再構築アルゴリズム

摘要

要旨：現在，歯科診療において，Ⅹ線診断に用いられている回転パノラマエックス線撮影法は，任意の断層面を撮影できる装置であるが，異なる断層面を得ようとすれば，その度にⅩ線を照射し撮影しかナればならない．それは患者の被曝の面から考えれば大きな問題である．パノラマ撮影法の理論からすれば，被写体透過後の時々刻々と変化するⅩ線像の中には，各断層面のすべての画像情報が含まれている．しかし，1枚のパノラマ画像にする場合には，ある曲面の断層像のみが抽出されるだけで，他の深さの画像情報はボケ像として捨て去られている．著者らは，1回のパノラマ撮影で，任意の回転半径rの断層像と，回転半径を任意の微少間隔で抽出できる多断層画像再構築アルゴリズムを開発した．そして実際にパノラマ写真を撮影し，デジタル画像再構築を行い，任意の回転半径上の断層像と0．5Inm間隔で回転半径の異なる断層像を抽出することに成功した．そのアルゴリズムはフレーム飛び越し法による画像構築によって，必要とする基本の回転半径r。 を決定し．そこに用いられたフレーム画像の重ね合わせに際し，フレーム移動量をごく細かな間隔，すなわち1画素サイズよりわずかに小さいか，又はわずかに大きい移動量で，Ⅹ軸方向にずらして重ね合わせるフレーム微少移動法を行う．フレーム移動量を1画素サイズより小さい範囲の移動量を設定して，Ⅹ軸方向にずらして各フレームを重ね合わせれば，必要とする断層像は基本とする半径r。 の回転中心から微少距離で，かつ一定間隔のro±△r上の断層像が抽出できる．さらに平面一曲面変換法，回転半径の異なる画像に対する濃度補正法を開発し，ワイヤーファントム，ヒト乾燥下顎骨の撮影を行い，多断層画像再構築を行った．その結果，回転半径40．Ommから955mmまで，0．5mm間隔で回転半径の異なる断層像の抽出が可能であることを実験的に証明することができた．この理論を応用するとパノラマ写真は，1回の撮影で任意の深さの断層像を自由に，瞬時に抽出することができるようになり，臨床への利用価値は極めて高いと考えらた．