大量Yグロブリン療法にて血小板増加が得られ安全に手術が施行されたMDSの1例

摘要

今回われわれは大量Yグロブリン療法（IVIG)にて血小板増加が得られ，大量出血が予想される大腿骨頸部内側骨折に対する人工骨頭置換術が少量の出血のみで施行された高齢者骨髄異形成症候群（MDS)を経験した.本例はMDSのうち不応性貧血（RA)に合致するが, PAIgGが著明高値を示しており，初回治療時にステロイドおよび免疫抑制剤に対する良好な血小板増加反応がみられていた.また直接クームス試験（DAT)は陰性ながら，この免疫抑制療法により初診時に認められた高度の貧血も改善がみられ，本症例においては貧血および血小板減少の原因として，分化異常に加えて自己免疫機序の関与が示唆された.ただ，術後1週間に健側下肢に深部静脈血栓症(DVT) が発生し，これにIVIGが関与した可能性が否定できない.MDSにおける自己免疫性血小板減少症にIVIG療法は有用であると思われるが，DVTのリスクのある患者には慎重投与が必要である.