結節性硬化症モデルマウスの自閉症様行動におけるmTORシグナル系の関与

摘要

自閉症スペクトラム障害（以下，自閉症）の治療において，中核症状である社会的相互交流の障害を改善する治療薬はいまだに開発途上である.自閉症の一部は遺伝 子異常に伴って発症することが知られている.元となる 疾患の病態解明は，その疾患に合併する自閉症の治療法 開発にも有用であると考えられる.結節性硬化症(TSC)は，750および750遺伝子のヘテロ変異によって発症し，最も頻度が高い自閉症の原 因疾患のひとつである.TSCの分子病態はシグナル伝達 系の下流で生じるmTORシグナル系の亢進であり，その 異常を是正するmTOR阻害剤は,TSCに合併する腫瘍に 有効である（Krueger et al,2010). TSCに合併する自閉症 も，mTORシグナル系の亢進が原因で生じており，mTOR 阻害剤を用いて改善できるのではないかと期待される(de Vries and Howe, 2007).