うつ病治療における薬理遺伝と個別化医療の可能性

摘要

要約：うつ病における薬物療法は大きな進歩を遂げたが，適切な用量および投与期間においても，良好な治療反応が得られない患者や，副作用の発現する患者の数は少なくない.このような反応性の個体差には，遺伝学的要因が関与しているであろうとの仮説に基づき，薬理遺伝学的手法は，治療反応予測，個別化治療に重要なツールであると注目され，さかhに研究されている.しかしながら，膨大な薬理遺伝研究の成果を解釈するのは，研究結果の多様性，不均一性もあり容易ではない.さらに，個別化医療，抗うつ薬の使い分けの根拠となる遺伝子多型などの予測因子を明らかにするためには，遺伝子多型ごとに層別化したrandomized controlled trial型の試験が必要となってくる.筆者らは日本人サンプルで継続して薬理遺伝因子を考慮したrandomized controlled trialを行っているが，本稿では，それら筆者らの研究成果を含hだこれまでの薬理遺伝研究をメタ解析し，わかりやすい形として提示する.そして，人種などの交絡因子にも配慮し，メタ解析結果と筆者らの試験結果とを比铰し考察する.最後に現在の薬理遺伝研究における問題点と解決方法を示し，今後の個別化医療へ向けて展望する.