胃底腺ポリープと胃癌

摘要

胃X線あるいは内視鏡検査で，穹窿部から胃角部にか けて単発あるいは多発する半球状，表面平滑な5 mm前 後のポリ一プで，病理組織学的に胃底腺の過形成と囊胞 状拡張からなる病変を胃底腺ポリープ，あるいは胃底腺 型ポリープと呼び，その名称のごとく胃底腺領域に発生 する。胃底腺ポリープは良性疾患の代表で，胃粘膜の炎 症や萎縮のない，正常と考えられる胃粘膜に発生するこ とから，胃底腺ポリープが認められた場合，胃癌の低リ スク群と考えられている。一般的には多発するものが 多く，胃がh検診の胃X線検査や内視鏡検査でしばしば 認められる病変である（図1,図2)。胃底腺ポリープの なかで，胃体部から穹窿部に多発するものを胃底腺ポリ ポーシスと呼ぶこの場合個数に定義はなく，家族性腺重性ポリポ—ソス(familial adenomatous polyposis ： FAP)に合併した胃病変としても，注目されている病 変である（図3)。その後，FAPに合併しない胃底腺 ポリポーシスも報告されている、胃底腺ポリーフは Helicobacter pylori (H. pylori)感染陰性の胃に発生 することが多，最近では丑.感染陰性者が増 加しているためFAPに合併しない胃底腺ポリポーシス の頻度が高まっている。また，プロトンポンプ阻害薬 (PPI)の長期投与で胃底腺ポリープが新たに発生した り，既存のポリープが増加あるいは増大し，胃底腺ポリ ポーシスの形態を示すことも明らかになっている。さ らに，H. pylori除菌後の胃粘膜に認められることもあ り，以前に比べると胃底腺ポリープに対する考え方も 大きく変わっている。