球形吸着炭（グレメジン~R)の適切な服用開始時期はいつか？-慢性腎臓病（CKD)進展阻止のため早期からの尿毒症毒素除去の必要性について-

摘要

球形吸着炭であるクレメジン~Rは1991年に進行性の慢性腎不全の治療薬として承認され た。日本腎臓学会がCKD診療ガイド2012で推奨する球形吸着炭の開始時期は慢性腎臓病 (CKD)病期4である。しかし，筆者は，糸球体濾過値（GFR)の進行性低下が明らかと なったCKD病期3a,遅くともCKD病期3bからクレメジンの使用を開始することで，より 効果を発揮させることができると考えている。何故なら，クレメジンの除去対象となる主要 な腎障害性尿毒症毒素の1つであるインドキシル硫酸（IS)の血清濃度が，血清クレアチ ニン（S-Cr)や推定糸球体濾過値（eGFR)と正の相関を示し，更にその傾向はCKD病期 2程度から示されているからである。また，CKD病期4はGFRが30 mL/min/1.73m~2未満で あることから，この時期に回復すベきネフ口ンの残存を期待するのは困難であることも理 由の1つである。これらを踏まえると，クレメジンの開始時期をCKD病期3 bに改めること により，CKDによる腎代替療法を必要とする患者の減少につなげることができると考える。クレメジン処方における進行性の目安は，「S-Crの上昇の割合が中等度以上（1カ月当 りの1/S-Crの変化が0.01 dL/mg以上）であること」が添付文書に記載されている。このこ とからS-Crが1.5 mg/dLのCKD病期3の症例であっても，1力月の間にわずか0.02 mg/dL でもS-Crの上昇が認められれば，1/S-Crの変化は0.01 dL/mgであり，進行性の慢性腎不 全，すなわちクレメジンの適応症例と判断することできる。CKDの進行性に着目して適応症例か否かを判断するクレメジンは，eGFRの概念のない時期に実臨床に基づいてェビデンスが示された唯一の慢性腎不全用剤であり，近年ISをはじめとする尿毒症毒素研究が急展開していることで，改めて注目されている。