ロマネスクという語の使用され始める時期におけるlombard(e)という語について1830 年から1848 年にかけてのフランスで出版された一般向け雑誌を中心に

摘要

現在一般に美術史用語としてロンバルドlombard(e)という語(以下lombard)はイタリア北部のロンバルディア地方における11 世紀から12 世紀のロマネスク建築である※1。しかしこの語は19 世紀フランスにおいて、イタリアの中世建築ではなく、オジーブ様式に時代的にさかのぼり、オジーブ様式に最終的に至る建築の前の様式を指す際に使われることもあったようである※ 2。そこで本稿ではlombard という語がロマネスクという様式概念の形成期にあって、どのようなかたちで何を指しているのかを明らかにすることを目的としている。ただし本稿では、学説史上に名を遺す有名な研究書や専門家向けに描かれたものではなく、1830 年から1848 年にかけて出版された、美術史の専門家向けの雑誌ではない一般向けの雑誌の中で、どのようにこの語がロマネスクと呼ばれる建築の中で関係を持っていたかを考えたいと思う。以下にこのロンバルドという言葉がどのような形で現れるかについて3 つの場合に分けて調査結果を整理してみたい(表1～3※3)。