原発性非小細胞肺癌に対する標準的肺葉切除術と縮小切除

摘要

厚生労働省がh統計によると，肺がhの罹患数は2008年には97,000人に達し2020年にはおよそ12万人に達すると予測される．肺がh患者の約40％に手術適応があると考えられ，日本胸部外科学会の年次報告では2012年の本邦における原発性肺癌の手術件数は35,000件を超え，罹患率の上昇とともに今後も増え続ける． 近年，医療技術の進歩と人口動態の変化に伴い，我々が普段対象としている肺癌手術患者の特徴は大きく変化している．（1）胸部CT検診の普及に伴う早期肺癌の増加，（2）高齢化に伴う高齢者肺癌の増加，（3）癌治療の向上に伴う多発肺癌?多重癌の増加が挙げられる．これらは本邦にて顕著であり，さらに，この傾向は他の先進国で今後見られる現象であると予測する．これら最近の原発性肺癌を対象にする場合，根治性を担保した必要十分な標準的縮小手術の開発?検証?EBMの確立が，我が国の呼吸器外科医に求められている． 新しい治療法の有効性と安全性を科学的に検証する手法が臨床試験である．質の高い，複数の前向き第3相試験を経て有効性が証明されると，エビデンスレベルは高くなり新治療がガイドラインで推奨される．外科治療におけるエビデンス構築も同様であり，これからの外科医には臨床試験を理解し遂行する能力が求められている． 第56回日本肺癌学会学術集会の「標準的肺葉切除と縮小手術」の教育講演では，標準的肺葉切除のEBM構築のこれまでの流れに加えて，縮小切除のEBM構築に向けて，主に本邦における流れを，各種臨床試験を解説することにより考察をする．