慢性うつ病の臨床における demoralization概念の重要性 一患者を励ます時機と自殺への配慮一

摘要

Demoralizationとは，ストレス対処に失敗し続けた結果生じる心理状態であり，絶 望感，無力感，自尊感情の低下などを特徴とする。気分の反応性の有無によって内因性抑 うつとは症状学的に鑑別可能である。患者の抑うつ状態が内因性のものであれば笠原の小 精神療法に準じて休息させることが必要だが，demoralizationの場合は，励まして徐々に 行動を促す治療方針が適切である。Demoralizationは自殺のリスクを示す重要な指標でも あるため鑑別が重要であり，その改善のためのキーボイントである「自己統御感の回復」は， 慢性うつ病臨床における治療目標のひとつである。慢性うつ病臨床では，患者だけでなく 治療者にdemoralizationが起こりうる点にも留意しなければならない。