レース用エンジンの過給技術

摘要

ターボチャージャやスーパチャージャによるエンジンの過給化は，小型軽量でありながら出力·トルクを大幅に増加できることから，レース用エンジンに広く使用されてきた。特にターボドナヤージャは，高出力である一方，燃費の面でも有利であることから，レース用エンジンの過給方式はターボチャージャが一般的である。 過給エンジンにおいて，耐久性を限界まで詰める代わりに，過給圧力を限界まで上げることにより得られる出力·トルクは,自然吸気エンジンとは比べ物にならず，数々の勝利を収めてきた。その一方で，その歴史は規制との戦いでもある。自然吸気エンジンに対する圧倒的な出力·トルクを規制するために，エンジン排気量の制限·過給圧力の制限（ポップオフバルブ，リリーフバルブなど）·給気側絞り（エアリストリクタ）·車重の制限などが実施されてきた。 中には過給エンジン使用が禁止されたレースもある。 このように厳しい規制が行われながらも，過給エンジンが使用されているレースはまだまだ多い。 現在でも過給エンジンが使用されているレースにおいては，単に出力·トルクを向上させれば良いものではなくなってきており，その耐久性や重量も非常に重要なファクタとなっている。 従ってターボチャージャに求められる技術は，流体性能·機械効率といったターボ総合効率の向上，材料開発，耐久信頼性の確保，小型·軽量化の技術，過給の応答性（レスポンス）向上など幅が広い。本稿では，これらの技術について紹介する。