海産貝類のタウリン蓄積メカニズム

摘要

タウリン（2-アミノエタンスルホン酸，NH2-CH2-CltSOnH)は,肝内にアミノ基とスルホンをもち. カルボン酸はないが食品栄養学分野では含硫アミノ酸 として扱われることが多い低分子化合物である.1827 年に牛の胆汁から発見され，タウリンという名称はギ リシャ語の雄牛を意味する"Tauros"に由来する.現在， 栄養ドリンクの有効成分として広く認知されているこ ともあり，機能性アミノ酸（様）成分の代表格ともい えるカ气発見から長い間，重要な生理的意義や機能性 は見出されず，胆汁酸への抱合が知られているのみで あった.しかし，1975年にタウリン欠乏食を与えたネ コにおける網膜障害や失明が報告された"ことでその 重要性が初めて明らかになり，さらに.ヒトの母乳中 に豊富に含まれ，乳幼児期の神経系の発達に重要な役 割を持つことが明らかにされる2)など，その生理的意 義が次第に明らかになつてきた.現在までに明らかにされているタウリンの作用に は，（1)肝機能改善，（2)うつ血性心不全の改善の2 つがある.これらの効果についてわが国では1980年 代から医薬品としての使用が認められている.さらに 近年，指定難病であるミトコンドリア病の一つである MELAS (ミトコンドリァ脳筋症.乳酸ァシドーシス-脳卒中様症候群）の脳卒中様癸作に対する抑制効果が 明らかになり3), 2019年には医薬品としての新規効果 が約30年ぶりに追加承認された.医薬品として認めらノ れた機能性以外にも.タウリン分子の浸透圧調節，細 胞膜安定化，抗酸化，抗炎症などの作用を介した多彩 な生理機能についての研究報告が多数あり，食品学分 野においても注目されるべき機能性成分である.