肥料の種類の違いが茶園土壌と茶樹のδ~(15)N値に及ばす影響

摘要

茶園とその周辺環境における窒素循環をδ~(15)N値を指標に用いて明らかにすることを目的に，茶園のδ~(15)N値を調査した．処理区としては，菜種油粕のみを施用した有機施肥区と春と秋に菜種油粕を含む配合肥料を，夏肥に化学肥料を用いた慣行施肥区を設け，施用した窒素肥料の違いが茶園土壌，土壌溶液および茶樹のδ~(15)N値に及ばす影響並びに茶樹の窒素代謝にともなう同位体分別について検討した．1）使用した肥料のδ~(15)N値は，硫安が－1．0‰，硝安が－0．8‰，菜種油粕が＋5．3‰であった．2）うね間土壌の全窒δ~(15)N傍は十8.5‰から＋9．7‰も深さ0～20cmでは処理区間の違いはみられなかったが，深さ20～40cmでは有機施肥区が慣行施肥区より約1‰高い値を示した. 3）有機脚巴区から採取した土壌溶液窒素は，平均値が約十13‰と慣行施肥区より5‰以上高いδ~(15)N値を示した．また，慣行施肥区でδ~(15)N値の低い化学肥料が施用された時期には，表層から採取した土壌溶液の値は十1．0～＋4．7‰に低下し，施用した肥料の種類により大きな影響を受けた．4）樹体のδ~(15)N値ほ吸収する土壌溶液の値を反映し，有機施肥区が慣行施肥区より高くなった．細根の全窒素δ~(15)N値は土壌溶液の値より低く，施肥窒素のδ~(15)N値が土壌中での代謝反応で上昇する以前に吸収されたか，土壌溶液窒素の吸収にともなう同位体分別によるものと考えられた．また，部位別のδ~(15)N値を比較したところ，窒素の貯蔵部位で高く，樹体内での窒素代謝にともなう同位体分別による変異も示唆された．