動物園での種の保存と研究事業 ～横浜市での取り組み～

摘要

野生動物の絶滅を回避または絶滅から復活させるための動物園での飼育下個体群管理の取り組みは，欧米において戦前の1930年代からヨーロッパバイソンの血統登録に始まり，アラビアオリックスなどこれまでにもいくつかの成功例が知られている。　日本の動物園においては，「種の保存」施設としての役割を充実させるため，1988年に種保存員会（SSCJ）を発足させ，32種だった種別調整種として飼育下個体群の遺伝的多様性の維持に努めてきた。種別調整種は発足当時から年々増加し，2007年10月現在，魚類両性爬虫類も含めて154種の飼育動物種が対象となっている。この間，ゴリラのような「財産」としての価値が優先してきた種でも国内移動が活発になるなど，種の保存を事業として積極的に推進すべきであるという意識が，職員だけではなく運営母体（自治体や民間会社等）の問でも確実に成長した。