成熟遺伝子型の異なるトマト緑熟果実の果皮色変動予測モデル

摘要

本研究では，正常に成熟する'PK331',正常に成熟 しないriw変異系統である'PK353',そのF1品種であ る'KGM011'(いずれもカゴメ （株)所有の育成品種） および'桃太郎'を対象として，呼吸速度，エチレン生 成速度およびa値について詳細に解析した。また，トマ ト果実の最適流通システム構築のための基礎的知見を得 ることを目的として，各トマト品種の緑熟果について，積算エチレン生成量を用いた追熟予測式を作成、評価し た。その結果，以下の知見を得た。① 'PK331','桃太郎'の緑熟果は，追熟中に典型 的なクライマクテリック型の呼吸速度，エチレン生 成速度変動を示した。また，エチレン生成の上昇と ともに急激にa*値が上昇した。② 'PK353'の緑熟果においては，保蔵中に呼吸速 度，a*値の変動はほとhどみられなかった。また， ェチレン生成量は検出限界以下であつた。③ 'KGM011'は，呼吸速度，エチレン生成速度，a* 値のいずれにおいても，親品種（'PK331'，'PK 353')の中間的な特性を示した。④ 個別果実の積算エチレン生成量とa*値との関係か ら，品種ごとにシグモイド型のa*値の予測式を作成 '評価した。その結果，'PK331', 'PK353', 'KGM011'および'桃太郎'における計算値と実測値と の決定係数は，それぞれ0.99， 0.06， 0.96および0.99 であった。⑤④と同様な手法により'PK353'を除く 3品種す ベてのデ一タを用いたa*値の予測式を作成した。そ の結果，計算値と実測値との決定係数は，0.97であつた。以上の結果より，トマト品種の追熟特性は，成熟にか かわる遺伝子型により大きく異なること，'PK353'以 外の正常に成熟する品種については，積算エチレン生成 量を独立変数として，異なる成熟遺伝子型のトマト品種 にも適用可能なa*値変動の予測式の作成が可能であるこ とが示された。