日本民話やグリ　ムおよびアンデルセン童話に登場する果実や野菜をはじめとする食物について

摘要

飽食の時代といわれる現代であるが，われわれが日々食べているものに関する情報はどのような形で後世へと伝えられていくのだろうか．情報社会においてはおそらく，おびただしいほど出版されている料理本やレシピ集がその役割の主な部分を担うものと思われる．では，活字や写真（映像）の文化や技術がまだ十分に発達していなかった時代の食文化についてはどうだろう．当時の人々はいったいどのような食物を食べていたのだろうか．　古くから語り継がれている民話や童話には，その物語が生まれた時代や地域の生活習慣や食文化などが色濃く投影されていると考えられる．そこで，本稿では古い時代のわれわれの食生活の一端を知ることを目的として，日本とヨーロッパにおいて長く語り継がれ，それぞれの地域の食生活や生活文化が投影されていると考えられる日本民話とグリム童話およびアンデルセン童話を素材にして，それらに登場する果実や野菜をはじめとする食物について考えてみた．