近年我が国で発生したPEDウィルスの特徴とその病原性

摘要

豚流行性下痢（PED)は1971年に英国で初めて報告 された後，70年代から80年代にかけてヨーロッパ各 国で散発的に発生が見られた1)。1980年代に入り. PEDはさらにカナダやアジア各国にも広がり.我が国 では1982年に初めてPEDが発生した2'。その後.90 年代に入りアジア各国では引き続きPEDが蔓延し， 1996年に我が国では9道県において発症豚延べ約 8万頭，うち約4万頭が死亡する流行が発生した3)。 さらに，2000年代に入ってからもアジア各国では PEDの発生は収まらず，2010年に中国で100万頭以 上の子豚が死亡する大規模な流行が発生した4)。その後,2013年4月に米国で初めてPEDが発生して以降， カナダ.メキシコ.コロンビアなどの北南米各国ゃ韓 国，台湾，ベトナムなどのアジア各国，またドイツ， イタリア，ベルギーなどのヨーロッパ各国でもPED の発生が相次いで報告され，世界規模のパンデミック な流行を引き起こした5"'。なお，我が国では2006年 以降，PEDの発生報告はなかったが，2013年10月に 沖繩県でPEDが発生されて以来，これまでに39都道 県にわたり1,000戸以上の農場で約50万頭以上の子 豚が死亡する大規模な流行が発生した81。