乳用種育成牛における 腸重積の一症例

摘要

症例は疝痛症状を呈したブラゥンスイス種乳用雌牛であり，輸液療法を中心とした内科療法を第7 病日まで行ったが満足のいく治療成績が得られなかった。そのため，直腸検査とエコー検査を実施し たところ硬結性腫瘤物を触知し，腫瘤内部に高輝度エコー像とターゲットサインを認めたため，腸重 積と診断して開腹手術を行った。その結果，空腸に硬結性腫瘤物を起点とした腸重積が確認され，腫 瘤を含めた空腸重積部位を約20 cm切除し，Cushing法による二重内反縫合によって端端吻合を行つ たところ治癒に至った。本症例は重積部位の空腸粘膜の鬱血と損傷が軽度であったために腸管閉塞が なく ，腸管の運動性が保持されていたために外科処置が奏功したものと推察された。