子牛におけるオステルターグ胃虫低濃度感染の免疫変調作用の研究

摘要

4カ月齢の子牛を用いて，オステルターグ胃虫（Ogtertagia istertagi）を低濃度で感染させた場合の免疫変調作用に及ぼす影響を検討した。 1群当たり4頭にして6群を形成し，各群は次のような条件設定に沿って供試された。 1群：寄生虫感染させなかった対照群，2群：寄生虫感染させなかったが，第64日目に午流産菌（Brucella abortus）19株ワクチン（BA）を接種し，78日目にオステルターグ胃虫の第3期幼虫（L3）の可溶性抗原の調整液（OAG）を静脈注射した。 3群：寄生虫感染させなかったが，78日目にオステルターグ胃虫のL3を75Ⅹ10~3接種した。 4群：毎週30Ⅹ10~3のオステルターグ胃虫のL3を持続的に感染させた。 5群：毎週30Ⅹ10~3のオステルターグ胃虫のL3を持続的に感染させ，64日目にBAを接種し，78日日にOAGを静脈注射により投与した。 6群：毎週30Ⅹ10~3のオステルターグ胃虫のL3を持続的に感染させ，その後78日目にオステルターグ胃虫のL3を75Ⅹ10~3接種した。 試験開始後の最初の10週間では，寄生虫感染させなかった子牛（1群，2群および3群）の体重，血液リンパ球（BL）のphytohemaggultinin（フィトヘムアグルチニン；PHA）に対する反応性はより高く，また飼料摂取量およびリンパ球数は有意に高かった（P＜0．05）。 一方，寄塵虫感染させた子年（4群，5群および6群）では，Pokeweed（アメリカヤマゴボウ；PMW）マイトジェンに対するBLの反応性がより高く，好中球数，好酸球数，血祭ペプシノーゲン（PP）倍，およびOAGに対するBLの反応性は有意に高かった（P＜0．05）。 実験感作期間（第10週～13週）では，5群の子年は2群の子年と比較して，11過日（BAを実験感作）および13週目（OAGを実験感作）の好酸球数およびPP億が有意に高かったが（P＜0.05），PHA，PWMおよびOAGに対するBLの反応性についての差異はみられなかった。 第13週目にL3を経口的に感作させると，リンパ球数の有意の低下（P＜0．05），好酸球数の有意の増加（P＜0．05）が引き起こされ，PP値はより高かった。 しかし，6群では3群と比較して，PHA，PWMおよびOAGに対するBLの反応性はより低かった。持続的に寄生虫感染させた子年において，OAGを静脈注射で投与した場合とL3を経口的に感作させた場合を比較してみると，6群（L3）の子牛は5群（OAG）の子牛よりも，リンパ球数が有意に低く（P＜0．05），PP値はより高かった。 ELISA検査の結果，寄生虫感染させた子年におけるOAGに対する抗体力価は，寄生虫感染させなかった子牛の力価よりも有意に高かった（P＜0．05）。 持続的に寄生虫感染させた子年の第四胃粘膜の病変は非常に重篤であった。 4群，5群および6群の子牛は，1群，2群および3群の子年と比較すると，粘膜の肥厚（浮腫）が観察され，好酸球数の有意の増加（P＜0．05）があり，基底部および幽門部における球状白血球と肥満細胞数はより多かった。 4群，5群および6群の子牛はまた，寄生虫感染させなかった子年よりも第四胃のリンパ節の塊が有意に大きかった（P＜0．05）。 1群の子年では，リンパ節の塊は最も小さかった。 第四胃のリンパ節中のリンパ球について，その増殖状況および抑制状況を検討したが，群間に差異は観察されなかった。